衣麻と僕と俺と私




「や・・・あのね、衣麻。


家におるってことは高校に行けんってことよ?」


「分かっとる」


「高校に行けんってことは大学にも行けんってことよ?


できてアルバイトくらいってことよ?」


「分かっとる」


衣里ちゃんが言いたいことは分かってる。


それでも、私はそうしたい。


だって、衣里ちゃんには夢があるから。


「衣麻・・・私はね、2年間だけでも大学に通えて良かった。


これは本心なんよ?


それに、姉としては衣麻にはちゃんと高校行って欲しい」


「でも、衣里ちゃんには夢があるやん」


教師になりたいって昔から言いよった。


その夢を叶えるために大学を選んで勉強頑張って


去年の4月にはコースに入れたって喜んでた。


それなのに、諦めて欲しくない。


「私にはね、まだ衣里ちゃんみたいにはっきりした夢はなくて


“家族に恩返しをする”って夢しかないんよ。


それって、まさに今のことなんかなって。


昔から私のせいで衣里ちゃんからも瑛太からも


お母さんを取り上げよる気がしとって・・・


お母さんがおらんなった今、できることはこれしかない気がする」