衣麻と僕と俺と私




きっと、泣きそうになってるんだ。


正直、こんな衣里ちゃんは初めて見る。


「・・・・・・それは・・・お母さんが死んだけん?」


「大まかに言えばそうなる。


でも・・・細かく言えば瑛斗のため」


『瑛斗のため』


その言葉で大体は理解できた。


「今の距離でも何とか通えるって感じやのに


次の家はもっと遠くなってしまうやろ?


いくら4月から幼稚園に行くって言うたって


お迎えの時間にはみんな仕事や学校やし・・・


それなら私が大学辞めて家におった方が」


「それはいかん」


やっぱり、衣里ちゃんの考えは私が思った通りだった。


だけど、それは駄目だよ。


「衣里ちゃんは、大学行って。


距離が遠くなっても、下宿とか、方法はあるやん」


お金はかかるけど家事ができる衣里ちゃんなら大丈夫。


「でも・・・そしたら瑛斗は」


「私が家におる」


衣里ちゃんの口が半分開いた。


多分、私がそんなことを言うなんて思ってもなかったんだ。