「衣麻ねぇ、お母しゃんは?」
お父さんの監視を逃れたんだろう。
瑛斗が私の部屋の入り口にもたれて泣きそうになってる。
「お母さんねぇ・・・あそこ」
瑛斗を抱っこして窓から外を見せる。
空には綺麗な星が輝いてる。
「おらんよ?」
「ほら、あれ。1番きれいな星があるやろ?
あれがお母さん」
春休み前のあの日、お母さんは事故に遭って
2日間意識不明だった後、息を引き取った。
一緒にいた瑛斗は
翔馬のお母さんに抱かれていて無事だった。
『母さんなら俺がついてるから大丈夫。
衣麻はおじさんを・・・
俺の母さんと同じにならないように見てあげて』
葬儀の日、翔馬に言われた。
葬儀以来、家族以外に誰とも会ってない。
『この村におったら志保子を思い出す』
お父さんのその言葉で決まった引っ越し。
タイミングよくお父さんは転勤になり
私たち家族も一緒に行くことになった。


