衣麻と僕と俺と私




衣里ちゃんにはちゃんと“教師になる”って夢があるのに


どうして私には“恩返しをする”って夢しかないんだろう。


ちゃんと自立しないと恩返しも何もできないのに。


そういえば、翔馬たちはどうするんだろう。


今まで何も考えてなかったけど


もしかしなくても高校を卒業してしまえば


私たちは本当にバラバラになってしまうんじゃ・・・。


「衣麻、すぐに出る支度して」


「え?」


ノックもせずに部屋に入って来た


衣里ちゃんの顔は真っ青。


いつもと様子が違うことくらいすぐに理解できた。


「お父さんと瑛太も向かいよるけん、早く」


「・・・・・・うん」


出てこなかった名前は2つ。


“お母さんと瑛斗”


小さめのリュックにケータイとお財布だけ入れて


衣里ちゃんと2人でタクシーに乗り込んだ。



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