衣麻と僕と俺と私




「真菜ちゃん、衣麻でええよ」


「え・・・」


「それに、敬語もなし」


真菜ちゃんは目をぱちぱちさせて驚いてるみたい。


そんな顔も何だか可愛らしい。


素直で優しくて・・・なんて良い子なんだろう。


「じゃあ・・・衣麻ちゃんで」


「うん」


少し悩んだ後に言った真菜ちゃんも、やっぱり可愛い。


「翔くんは誰に告白されても付き合わなかったの」


河原に下りて水切りを始めた翔馬を見る。


小さい頃から一緒だった翔馬は


私から見て、もったいないくらいかっこいい。


昔はただただ可愛い顔で


女の子に間違われるくらいだったけど


高校に入学して再会した時に思ったのは


“もうすっかり男の子や。


可愛い面影はあるけど、かっこいい方になっとる”


ってことだった。


そんな翔馬がモテないはずがない。


しかも、こっちにいた頃の翔馬は


可愛いからかっこいいへの移行期間だった。