衣麻と僕と俺と私




ストレートだなぁ。


隣の部屋ってことは


こっちにいる間の私のポジションだった訳。


実は少し嫉妬しちゃったけど


この様子だと心配ないみたい。


「あーはいはい。翔くんって分かりやす。


衣麻さん、翔くんはいつも


衣麻は可愛いんだって言ってたんですよ」


またこの話か。


北海道に来てから何回目だろう。


嬉しいけど、やっぱり恥ずかしい。


「そんな・・・可愛くなんて」


お世辞って分かってたけど


何回も言われたら否定しないと。


翔馬には可愛いなんて言われたことないし


自分でもお世辞にも可愛いとは思えない。


「そんな・・・衣麻さんは十分可愛いです!


もっと自分に自信持ってください!」


なんて優しい子なんだろう。


さっき出会ったばかりなのに、すごいな。


「それにね、衣麻さん」


ここまで来て、私は思った。


いくら1つ下だといっても


“さん”で呼ばれるのは慣れない。


越智じゃなくて衣麻ならなおさら。