衣麻と僕と俺と私




少しして玄関のドアが開いて


おばあちゃんより少し若いくらいの女性が姿を現した。


「あれ・・・久しぶりだねぇ。


お母さんはどう?少しはよくなってる?」


その表情から、本当に心から翔馬たちのことを


思っているのが伝わって来る。


きっと、すごく優しい人。


「はい、随分元気になりました。


今は修学旅行でこっちに来てて」


「あぁ、修学旅行!翔馬くんも2年生だもんねぇ」


「はい。あ・・・前によく話してた幼なじみの衣麻です」


今まで2人の様子を見てたのに


突然私に話が向かって思わず“え”と言ってしまった。


地下街を散策した時もそうだったけど


翔馬は誰にでも私のことを話してるの?


「おやまぁ・・・可愛い子だねぇ」


大家さんが私の手を取って優しく撫でながら言うもんだから


私は照れてしまって何も言えない。


「これからも翔馬くんと仲良くね」


「あ・・・はい!」


やっとこれだけ言って


翔馬とともに大家さん宅を後にした。