衣麻と僕と俺と私




だって、多分だけど衣麻が一番迷惑と心配をかけてきたから。


「大人になったらね」


「ん?」


お父さんは衣麻の話に耳を傾ける体勢に戻った。


「大人になったら、衣麻、みんなに恩返しするけん。


今までいーっぱい色んなことしてもらったけん


今度は衣麻がみんなに色んなことしてあげる」


お父さんは驚いた顔をした。


そりゃあもう、目から目玉が落ちちゃうんじゃないかってほど。


だけど、すぐに嬉しそうな顔になって衣麻の頭を撫でてくれた。


「楽しみにしとくけんね」


「うん!」


電車の中でのお父さんとの秘密の話。


衣麻はすごく幸せな気分になって、すぐに眠気に負けた。