衣麻と僕と俺と私




「もしかせんでも私、夜景もご飯も」


「見てないし食べてない」


嘘だ。最悪。


初日から人ごみにやられてた私は昨夜ピークに達して


ひどい頭痛と微熱で寝ちゃったんだ。


「夜景・・・楽しみにしとったのに」


「知っとる。写真はちゃんと撮ってきた」


“ほら”とデジカメを渡された。


これ、私のカメラ。


「ま、撮ったのは俺じゃなくて雪乃だけど」


「そっか」


あとでちゃんとお礼言わなきゃ。


ん?ってか、今日って


「みんなと動物園は?」


「は?みんなとっくに出発したけど」


“何言ってんの”って顔で見て来る翔馬。


いくら私でもそんなことは分かってる。


「そうじゃなくて!」


「あぁ・・・先生に説明して俺と衣麻は留守番。


衣麻が回復したら時間内だったら出かけても良いって


許可ももらったから」


淡々とした説明。