衣麻と僕と俺と私




そして今は帰りの電車の中。


衣里ちゃんと瑛太とお母さんはウトウトしてるけど


衣麻とお父さんは起きてておしゃべり。


「衣麻ね、中学生になったら衣里ちゃんと同じ部活で


同じ楽器したいなーって思いよん」


衣里ちゃんは吹奏楽部でパーカッション(打楽器)をしてる。


人数は少ないけど


行事のために練習するのがすごく楽しいって笑顔で話してたから


衣麻もやりたいって思うようになった。


「衣麻ぁ・・・楽譜読める?」


あ、お父さんそんな不審そうな目で見ないで。


「大丈夫。衣里ちゃんやって楽譜読むの苦手やったけど


今はちゃんと読めるようになったって言いよったもん」


それに、いざとなったら衣里ちゃんに教えてもらう。


ずるいかな?そんなことはないはず!


だって、衣里ちゃんは衣麻のお姉ちゃんだもん。


「そっか。衣麻ももう10歳になったんやもんね。


中学生になるんもあっという間やろなぁ・・・」


お父さんはしみじみと言った。


衣麻の両親は時々、こういう表情をする。


多分だけど、衣麻の小さい頃を思い出してるんじゃないかって思う。