衣麻と僕と俺と私




今回の修学旅行、行先は北海道。


それも、翔馬の第二の故郷も入ってる。


「衣麻、大丈夫?」


飛行機は初めてで、恐怖でしかない。


隣に座ってる雪乃に心配されてしまう。


雪乃も良太も初めてのはずなのに。


「・・・無理」


「衣麻、離陸し終わったら楽になるから」


良太の隣にいる翔馬に言われたけど、今が辛いのに。


「もう帰りたい」


“こんな時、家族が傍にいれば”


なんてことを考えてしまう。


家族がいれば、何も怖くない。


「衣麻」


「何」


良太が話しかけてくるけど、すごく不愛想な返事になった。


別に、私たちの仲だから良いんだけど。


「これ、翔馬がしとけって」


「え?」


つむっていた目を開けて右を向くと


良太の手の平には一組の耳栓。


「補聴器のけてする?」