衣麻と僕と俺と私




「ごめん。母さんがどうしても連れてくってきかんくて」


「あー・・・そういうことか」


文化祭に来てくれたおばさんは


やっぱり大分回復してきてるみたい。


最近は何でもしてくれようとするみたい。


過保護っていうのとは違うけどね。


「こういう時、ケータイがあれば便利なんだろうけど」


あれ、そう言うってことは


「翔馬も持ってないん?」


都会の中学に通ったんだから


当然持ってるものだと思ってたのに。


「持ってない。


さすがに10年間、必要ない環境で育ったら


向こうに行っても持つ気にならんかった。


向こうでは部活も入ってなかったし」


初めて聞く、北海道での翔馬の話。


部活、てっきり中学からしてるんだと思ってた。


「あ、衣麻、前向け。式が始まる」


翔馬の言葉に前を向くと


もう先生方が一列に並んでいた。



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