衣麻と僕と俺と私




区切って言ってくれてるから


遠く離れているのにちゃんと聞き取れた。


「うん!」


私が言い終わるか言い終わらないかのタイミングで


翔馬は校舎の中に消えた。


つまり、もうすぐ翔馬がここに来る。


どうしよう、ドキドキする。


胸に手をあてて深呼吸。


「衣麻」


「あ・・・」


緊張で苦しくなって座り込んだ時


ドアを開けて翔馬が屋上にやって来た。


「体調悪い?」


すぐに駆け寄ってそうきいてくれる翔馬はやっぱり優しい。


それは小さい頃から全然変わらない。


「ううん、そうやなくて・・・苦しくて」


「苦しい?保健室、行く?」


翔馬はどういう意味の“苦しい”なのか分かってない。


そりゃあ、まだ私の心が整理できてないと思ってるから


当然っちゃ当然なんだけど。


「翔馬」