衣麻と僕と俺と私




こういう時は少し胸が痛む。


こうして大事なことを聞き逃して生きて行くのかと


すごく深く考え込んでしまう。


「お母さんが明日の準備できとんかって」


「明日の準備・・・あ」


しまった、やってない。


昨日の夜は“明日の朝しよう”って思ってたけど


その“明日の朝”はすっかり忘れて宿題をしてた。


「すぐ帰ってするから、瑛太先に帰っとって?」


「駄目。衣麻ねぇすぐ忘れるけん待つ」


何てしっかりした弟。


って感心してる場合ではないか。


「みんなに言って来るね」


瑛太が頷いたのを見てから、今度はみんなの元へと走る。


「瑛太、何だって?」


「あー・・・衣麻帰らな。


明日からの準備するん忘れとった」


翔馬の問いに答えると、みんな“やっぱり”って顔をした。


「さっき泊まりの話したんやけん思い出しや」


はい、良太の言う通りです。


「ほら、瑛太待っとる」