「か、梶原くん……っ!」
そういえばさっき、梶原くん置いて逃げちゃったんだっけ……。
私ってばなにやってるの!!!
「あ、あの、さっきはごめんね!助けてもらったのに逃げちゃって……」
「いやいや、そんな気にすんなって。あの女子の集団はすごいもんなぁ」
「あ、ありがとう。ほんと、すごいよね……」
あんなの毎日できるってすごい根性してるな……。
私はあんなに好きな人を追いかけるなんて無理だ。
「あれ、でも東本って澤村と付き合ってるんじゃ……」
「あっ!!!そ、そういえば今日は1時間目から生物かぁ~めんどくさいなぁ」
“朔空くんと付き合ってる”
そう言ってしまったら私はウソをついたことになる。
だから絶対に言わない。
朔空くんもさっき女の子たちに『秘密』って言ってごまかしてたもん。
「そう?俺は結構、生物好きだけどな」
「えぇ――っ!私さっぱりわかんなくてほんと困るよ……」
「じゃ、わかんない問題とかあったら気軽に聞いて?わかる範囲で教えるよ」
「ほんとに!?ありがとう!」
梶原くんはやっぱり優しい。
優しいけどその優しさが私を苦しめるんだ。