「朔空でしょ?」
立ち止まって振り返るとそこには、このあたりではみかけない制服のツインテールの女がいた。
その手には大きなボストンバッグがあった。
俺は今朝、森川羅菜に言われたことを思い出した。
どうせ俺のファンかなにかだろうって思ってた。
でも……違う。
俺はコイツのことを知っている。
「朔空、久しぶりだね」
「玲(れい)……お前なんで……」
「へへ、この町が恋しくなっちゃって」
1つ年下の幼なじみ・竹原玲(たけはられい)。
小さい頃、家が近所でよく遊んでた。
でも小学校低学年のときに父親の仕事の都合で遠くへ引っ越していった。
それ以来、全く会ってなかったから、会うのは7、8年ぶりだ。
まさかまた玲に会うなんて思ってもいなかった。
俺の記憶から消えかけるほど、昔のことだったから。
玲の笑顔に俺はうっすら懐かしさを感じた。