教室に入ると、俺は自分の席についた。
すると、見覚えのない女子が目の前にやってきた。



「澤村くん、と、隣のクラスの鈴木っていうんですけど……お、お菓子作ってきたのでよかったら食べてください!」



その女子はソワソワしながらそう言うと、綺麗にラッピングされたお菓子を渡してきた。



「ごめん、俺、彼女いるからこういうの困るんだよね」



俺はいつもの精一杯の王子様スマイルでそう言った。



「あっ、そうだったんですか……!ご、ごめんなさいっ!」



「本当にごめんね。わざわざ作ってきてくれてありがとう」



優しく言ったつもりだったけど、その女子は目に涙をためて、教室を出て行った。



あぁいうの見ると、すっげぇ苦しくなるんだよな。
俺と陽莉が付き合ってるっていうのを知ったうえで、ああいうことしてくる人には普通に断れるんだけど……な。
知らないでしてくる人は断ったらすごくショックな顔するから……。



「……朔空くん、また告白?」



陽莉が不安そうに俺の前の席に座って、顔を覗き込む。



「んーまぁ、そんなもんかな」



「ほんと朔空くんってモテるね」



「なに、ヤキモチ?」



俺が聞くと陽莉はなにも言わずに目をそらす。