「…………」
幸せだった、過去に戻れたらいいのに。
私がもう少しはやく自分の気持ちに気づいていれば、なにか違ってたかもしれないのに……。
なんて、後悔の言葉だけが私の頭の中をぐるぐると駆け巡る。
『お前のそういうしつこいところがめんどくさいんだよ。わかった?』
“めんどくさい”か。
確かに私はみんなに鈍感って言われるほど理解力ないし、空気読めないし、めんどくさいよね。
そう言われても仕方なかったんだ。
「陽莉、呼ばれてるよ」
「え?」
羅菜の指さした方を見ると、羽山くんが廊下からこちらに手をぶんぶん振っていた。
羽山くんと会うのは少し久しぶりだ。
あの日からあんまりうちのクラスには来なかったし。
どうしたんだろう?
私は立ち上がって廊下に出た。
「羽山くん、少しお久しぶりだね」
「は、はい!お久しぶりです!」
少し頬を赤くして緊張気味の羽山くんが私に笑顔を向ける。