「なんでもいいけど、とりあえず澤村くんは出てって!陽莉、着替えないといけないし!」
「あぁ、そうだね」
森川羅菜の言うことを素直に聞いて、俺は立ち上がった。
「う、うん」
「じゃ、またあとでね。陽莉」
俺が手をひょいっと挙げて保健室を去ろうとすると……。
「あ、あの!さ、朔空くん!」
陽莉が俺を呼び止めた。
「ん?」
俺は立ち止まって振り返る。
陽莉の顔はまだ少し赤くて、なんだか可愛い。
「あ、あの、その……ありがと、ね!」
「……おう」
陽莉の笑顔にドキッとして顔が熱くなったのを隠すために、すぐに俺は保健室を出た。
はぁぁあ……なんなんだよアイツ。
不意打ちでああいう風に笑うのやめろっての。
理性が保てねぇだろ……バカ。
俺は保健室のドアの前で一回深呼吸してから教室に戻った。