「……ほんとお前ムカつく。いっつも俺は余裕なくて……お前はズルい」



「朔空くん……?」



朔空くんは今どんな顔をしているのだろう。
抱きしめられてるから全く見えない。



「もう、アイツと2人きりになったりすんなよ……」



そう言った朔空くんの声は少し震えていた。



なんで……朔空くんがここまで言うんだろう。
ただの見せかけの彼氏彼女のはずなのに……なんで……?


私を惑わすため?
それとも……?



考えれば考えるほど、私の顔の熱は増していく。



「つーか、これ命令だから。破ったらお仕置き」



と、付け足して抱きしめる力を強めた。



甘えてくる子どもみたいな朔空くんがなんだか可愛くて、私は無意識にギュッと抱きしめ返した。



「陽莉……?」



……って、私なにしてんの!!!



自分でやっといてめちゃくちゃ恥ずかしい……っ!



慌てて手を引っ込めて下を向く。