女子力のかけらもないような顔で起きたのは2時間後。わたしは暗くなった家に電気をつけた。

「本当に寝てたんだ、わたし」

事実を受け止めろ、自分。

すると、少しさみしくなった。
起きても誰もいない。涙を流したからって変わらない。流してなくても変わらない。

タイミング良く兄が帰ってくる。

「お兄ちゃん、おかえり」

応答はない。どうしたのかと思いいままで寝ていたソファから身体を起こし、覗いてみた。

「…真顔やめてよ」

兄は真顔で口をぽかんと開いていた。わたしがおかえりと言うだけでこのザマだ、いなくなりたい。

「だだだだだってはななながおかえりって、え?え?は?」

動揺している。もうだめだ。

「はいはい、妹君の挨拶でそんなに動揺するんですね〜お兄様」

「はなあああああああ兄はそんな妹君を愛しているぞおおおおおおおおお」

「キモい」

お兄ちゃんはかっこいい。

母譲りの顔。死んだ父譲りの優しいところ。これは学校でもモテるだろう。むしろモテている。現在進行形で。

三年のお兄ちゃんは漫画に出られるんじゃないかと思うくらいどこの学年にも「はなのお兄ちゃんが好き」という戯言奴…じゃなくて、惚れてる子が沢山いる。

実際玲はもともとお兄ちゃんが好きだった。振られていたけれど。

お兄ちゃんは彼女を作らない。わたし一筋、なんて言っちゃって本当ばか。

可愛くないわたしに一本筋を引かれても邪魔なだけだ。できることならはさみでちょん切りたい。

…でも今はおかげで元気が出た。

「ありがと、お兄ちゃん」

そう言って自室に入り、机に向かった。