「あ、あの…此見さんですか」

「此見です。えと、澤村さん…かな?」

外見的にはもさくて、眼鏡で、いかにも理科室に閉じこもってます!!みたいな風貌の人がわたしの顔を覗き込んでいた。

「うん、そうだよ。澤村。よろしくね、此見さん」

「こちらこそ…よろしくね」

にへ、と微笑んだ澤村くんは外見とは違い仔犬の様に可愛くて。
意外に華奢で背高いし、髪の毛はちょっと長めで…目、見えてんのかな?て思うくらい。

まあ…わたしは好きとか嫌いとか愛してるとかどうでもいいかな、っておもうんだけど。

SHRが終わり、机に突っ伏している玲の席に行った。


「はな、どうしよう、やばい」

「なんしたの、落ち着きなさいな」

「俊哉くんの隣だった…どうしよ、もう…はあ…」

玲は同じクラスの加藤俊哉…顔面ではこの一組のトップじゃないか、というくらいかっこいいらしいその人が入学当時から好きで、その人の隣の席で緊張していた。何がどうしよ…だよ…と思いながらがんばれ、とだけ言って玲の元を離れた。

…数学か、だるいな。
よく恋愛小説とかである屋上たるもの空いておらず、サボることも許されない。

漫画の世界に行きたいともやもや考えながら教科書を探した。

「…わすれた」

そういえば昨日家で数学の教科書使ってハエ潰したな、という自分にしては珍しい初歩的ミスを冒したらしい。

…隣の席の人に借りるか。

そう決心したとたん、図ったかのように授業が始まった。