「…ところで何するの?カットモデルって…どういうこと。」

折角ここまで髪の毛を伸ばしたんだ。
切るのは勿体無い。

「んー、カットモデルっても彼方だからメイクとか服とか変なところまで突っ込むかもね。」

「黙れ長谷川。一言も二言も多いんだよカスが。」

いつもの澤村くんのイメージからは想像もつかない言葉遣い、ファッション、顔。
全てに緊張してしまう。
とりあえず座って、と店のソファに座らせてもらった。

ここにいると、すっぴんでぼさぼさの髪のわたしが恥ずかしくなってくる。
不細工なわたしのこの顔をどう可愛くすると言うのだ。

「此見さん、こっち。」

連れて行かれたのは秘密基地みたいな広い部屋。

「俺いっつもここにいるからさ、放課後用事無かったら、ここ来てよ。」

いつの間にか突っ込まれていたスカートのポケットには鍵の感触。
秘密を共有しているようで、なんだかくすぐったかった。

「今日何するの?髪…切る?」

毛先を弄りながら聞いた。
切らないよ。とふんわりと微笑む澤村くんはいつもの澤村くんだった。