今日は随分と暑い。
制服が堅苦しくて嫌になる。
気だるかった歴史を寝飛ばした。
勝手に半袖Tシャツ、学校指定ジャージのハーフパンツを捲り、真夏ファッションへと着替える。
安定した柄付きソックスにつま先の空いたサンダル。
校則が緩いので、皆自由に制服を着崩している。
「あつい…玲、下敷き貸して」
「下敷きの前にその暑苦しい髪の毛を結わえたらいかが?」
「自分で結べないんだもん」
そう、わたしは不器用なのだ。
髪の毛を結ぼうとしてもほどけてしまう。
まとまらずにばらばらと零れ落ちていく。
意味がわからない、花音あたりが結わえるとぴしっと整うのに。
「花音〜〜髪結んで〜〜〜〜」
「おこちゃまはなちゃん?自分でやりまちょーねー」
生徒会のなんだかがあるらしく、最近花音が教室にいない。
今も何やら重要だという書類を抱えて先生に話しかけていた。
偉い子だな、花音は。
見かねた玲が、とんでもない言動をした。
「あ、澤村。
はなの髪結んであげてよ。」
澤村くん…髪の毛結べるの…?
玲の制服の裾をくいくい引っ張り、心配そうな目線で語りかけていた。
「…いいの?」
「此見さんなら大歓迎だよ」
そんなことを言いながら椅子に促してくる澤村くん。
にまにまとこちらを見る玲。
澤村くんと話していたであろう男子がわたしの周りをうろちょろしていた。
どん、と机の上に置かれた大きめの鏡と、ピンク色のポーチ。
その中をゴソゴソと探り、細い櫛を取り出した。
髪の毛を梳かす澤村くん。
放ったらかしにしていた髪の毛はとうに腰まで届きそうになっていた。
「あーもう此見さん、トリートメントしてないでしょ。ドライヤーしてる?アイロンとかストパーとかかけようよ、凄く痛んでる。」
とりーとめんと?あいろん?すとぱー?
何語だ。どこの国の言葉だ。
お風呂のときはシャンプーしかしない。
上がったらバスタオルでわしわしっと乾かす程度。
「髪の毛にアイロンてどういうことですか先生」
「ストレートアイロン。洋服にかけるアイロンとは違うの。」
洋服にかけるあのごついアイロンを想像していた。
違うのか。一つ勉強になった。
「…ところで澤村くんはなんで髪の毛結べるの?神なの?」
「神じゃないよー。俺がちっさい頃に兄ちゃんが美容師になってさ、それで。」
お兄ちゃんがいるんだ、わたしと同じだ。
鏡の中には、澤村くんとわたし。
本当にブサイクだなあ。
定まらない輪郭に、ぱっちりもしていない重そうなまぶた。
下唇だけぶくぶくとたらこのように膨れ上がっている。
こちらも放ったらかしにしていた前髪。
鼻に届きそうで、玲に借りた挟むタイプのピンで横に留めていた。
気付くといつの間にか髪の毛が持ち上がり、ポニーテールになっていた。
「わ、すごい。ありがとう。」
「此見さん、放課後俺と遊ぼうよ。」
爆弾発言に驚いた。
澤村くんはわたしなんかで遊ぶんだ。
…たのしそう。
つい、いいよ。と返事してしまった。
