「えー、初めまして。」
教室に入ってきて教卓で挨拶をする男。
その男をボーっと眺めた。
「みなさんの担任になりました、福井です。」
福井、と名乗った男は、チョークを持ち黒板に文字を書いた。
コツコツと控えめな音がして、現れた名前。
【福井 裕人(ふくい・ひろと)】
名前も、性格も、容姿も控えめだった。
こんな男が私の担任なのかと思うと、少し嫌になる。
ひ弱で、頼りない。
あー、何か面白いことないかな。
私は周りを見渡した。
右となりは壁、というか扉。
左となりは空席。
後ろと前に一人、かあ。
「はあ……。」
というか、名前の順、じゃないんだね。
適当なのかな。
「ねえねえ! 君!」
前の女の子が私に話しかける。
「ん……??」
「なんか変な席順だよねえ。なんなんだろ?」
「え……。わかんない。」
「そっかあ、だよねえ。」
あははと女の子は笑う。
なんなんだろう……??


