揺られるバスの中、人はいなくて、一番後ろに座った。
手は繋いだまま。
信号でバスが止まる。
「ねぇ、音楽きく?」
突然、イヤホンを見せながら聞いてきた。
「うん」
二つのイヤホンを一つずつ片耳につけた。
すると、静かに、有名なラブソングが流れた。
『忘れないで このぬくもり
他の誰でもない君 あの涙も その笑顏も』
ほかに曲が流れるなか、この歌詞だけが胸に残っていた。
駅前のバス停で、降りた。
「どこいくの?」
と聞くと、口の近くに人差し指をあてて
「内緒!」
最後に、笑った。
手を引かれるまま、ついていくと……
「きれい……」
プラネタリウムカフェ、という最近できたカフェだった。

