まだ、少し桜の花びらが残っている。


ただ、校庭に広がっていた桜の木は、青々した葉に覆われていた。


あの時の放課後から、もう約1ヶ月が過ぎた。

あれから、毎日冬野はいつもよりも早く学校に来ては、私に向けられる「好き」の言葉。


それでも、その言葉は違う人へのもの。

これほど残酷なことはなかった。

ただ、いつも変わらず「好き」と言ったあとの、頬を赤くして照れる冬野の姿は、今は、私だけのものだった。


今日もまた、教室へと向かう。

もちろん、ドアをあけても誰もいない。

そして

ガラガラ…

入ってくる、冬野。

「おはよう!春田」

そう言って、眩しいくらいの笑顔を私に向ける。

「うん!おはよう!冬野君。」

それに負けないくらい、みんなには見せないような笑顔で返す。

すると、いつもなぜか頬を赤くする。

私のことが好きなんじゃないかって、思っても仕方ないくらいの反応。

ただ、私は自惚れずに気にしないように見せる。