あれから毎日7時に必ず春樹は迎えに来てくれる。
駅につくまでの10分、電車の中で1時間。春樹がいてくれると、退屈な通学時間が楽しくなる。
春樹の話はすごく面白いし、私の話も聞いてくれる。

そんなある日、春樹がつぶやくように言った。
「咲楽のおかあさんって優しいよな」
「どうして??」
「だって、お弁当を忘れてたら届けてくれるし、帰るのが遅くなったら外で待っててくれるし…」
「そうかなぁー…」
「うん、うちは母親が働いているから」
「お父さんは??」
「しらねぇー。生まれた頃から家にいないんだよ。写真は何枚かあるけど」
「そうなんだ…ごめんね、なんか…」
「いいんだ、一人には慣れてるから」
「…。」
空気がしんみりしてしまった。
「この話は終わりっ!咲楽は部活入った??」
「ううん、まだ」
「じゃあ、バスケ部のマネージャやらない?」
「バスケ部かぁー…んー、じゃあ見学だけでも行ってみようかな…」

実は、前の学校でバスケをやっていた
でも、試合で肩を壊してから、バスケのボールすら見るのが嫌だった。でも、春樹のお願いは断るわけにはいかない。それに、肩はもうほとんど治っていて、バスケに関わっていたいっていう気持ちも少しはある。

「ほんとに??放課後クラスに迎えに行くから!」
「わかった、楽しみにしとくね!」
「おうっ!」