『……あの、悪気はないんだけどね?』
 御園生のこちらをうかがうような声。
「うん」
『確かに中学の同級生なんだけど……私が中学の同級生で顔と名前が一致するのって鎌田くんくらいなんだけど……』
「うん」
 やけに長い前置きに笑みが漏れる。
 御園生が慎重に言葉を選んでいるのを感じながら耳を傾けていた。
『それでも、やっぱり「友達」って言えるほど仲が良かったとか、たくさん話をしたとか……そういうのはなかったでしょう?』
「そうだね」
 確かに、こんなふうに話せたことはなかったし、こういう内面の話をできたこともなかった。
 俺には踏み込むことができなかったし、御園生は踏み込ませてはくれなかったから。
『だから……何がどう変わったっていうのはよくわからないの。でもね、私の中で鎌田くんはどんなことにも一生懸命に取り組む人に見えてて、それがいいなって思ってた。私、学校の中で肩の力を抜いて話せる人は鎌田くんしかいなかったから』