御園生の声が耳に直接聞こえるのがなんだか不思議だった。
 中学のときだって、こんな近くに御園生の声を聞くことはなかったわけだから。
 御園生が目の前にいると思うと途端に余裕がなくなる。でも、電話ならいつもの自分に近い精神状態を維持できるみたいだ。
 このまま、このまま普通に話していたい――。
 会話内容なんてなんでも良かった。世間話でかまわなかった。
「そしたらさ、ひどいんだよ。じゃぁ、お前は男として見なされてないわけだってサクっと痛いところつかれた」
『あ、ごめんっ』
 謝られて新たに笑う。
「御園生、御園生……それ、暗に『そのとおり』って言っちゃってるから」
 くつくつ笑うと、
『鎌田くん、今の学校楽しい?』
 その問いかけに、学園祭で話したことが頭をよぎった。
「うん。俺、少しは変わった?」
 何を基点に尋ねているのかは定かじゃない。でも、御園生が知っているのは中学三年時の俺だと思うから。そのときから、何か少しでも変わったと感じてもらえたら嬉しいと思う。