あの大きな瞳には何が映っているんだろう……。
 とてもキレイだと思った笑顔を見ることなく月日が過ぎ、一学期が終わる頃には「何も見ていないのかもしれない」と悟った。

 男女間での会話があまりない中学だったため、同じクラスでもなかなか話す機会はなく――。
 そんな中、彼女と掃除場所が一緒になることが多かった俺は、勇気を振り絞って訊いたことがある。
 核心的なことは言葉にはせず、「大丈夫?」とだけ。
 彼女の瞳が揺れた。何も映していない瞳が揺れた。その中に自分が映っていた。
「あり、がとう。でも、大丈夫だから気にしないでね」
 彼女も核心的なことは何も話さず、控え目に笑みを添えて口を閉ざした。