テラスをある程度進んだところで、前方から藤宮くんが歩いてきた。
 彼が歩くだけで周りの女子が騒ぐ。そんな容姿の持ち主。
 袴姿のときとはまた違った存在感があった。
「あ、いたいた。御園生さん、ありがとね」
 隼人先輩がお礼を言うと、御園生は「いえ……」と小さく答える。
「ところで御園生さん」
「はい……?」
「インハイのとき、夜、藤宮くんに電話した?」
 御園生は、「え?」といった顔で先輩を見上げる。
「女の子から電話かかってきたんだよね。そのとき、携帯から聞こえた声が御園生さんぽいなって思ったんだけど、違った?」
「いえ……たぶん、私です」
「そうだよね? さらにはさ、その黒い携帯。御園生さんのじゃなくて藤宮くんのじゃない?」
 御園生がびっくりした顔をして、次の瞬間には真っ赤になった。