御園生は少し困った顔をしていた。すると、
「試合でね、藤宮くんに勝ったら紅葉祭のプレミアムチケットちょうだいってお願いしてたんだ。それで見事に勝って今日ここに来れたわけだけど……。その藤宮くんと携帯つながらないんだよねぇ。居場所知らない?」
 初対面なのに、なんとも自然な調子で会話をつなげる。
 御園生は「あ」って顔をして、
「あの、すみませんっ」
 ぺこりと頭を下げた。
「御園生さんだっけ? 君が謝ることないでしょ?」
 先輩は頭を上げるように促す。一連の会話を聞いていたのか、御園生の腕を掴んでいる女子が口を挟んだ。
「姫、チケット確認。本当に藤宮くんの招待客ならチケット番号が『2001』で始まるから」
 御園生、姫って呼ばれてるんだ……。
 話をする以前に、視界におさまる御園生に満足してしまいそうな何か……。けれど、そんな俺の傍らで次々を言葉を交わす隼人先輩。