学園祭なのだ。人が一所にずっといるわけがない……。
「この中から見つけるのは至難の業だなぁ……」
 隼人先輩の言葉に頷きつつ、それでも諦めることはできずに周りの生徒を一人ひとり確認していた。
「俺も藤宮くんの携帯にかけてんだけど、全然つながんないの。彼は携帯を所持しているんだろうか」
 隼人先輩が携帯片手に苦笑する。そのとき、
「ねぇ? あれ、なんの行列かな? ちょっと行ってみようよ!」
 ハルが指差したそれは長い行列だった。
 列は校舎の中まで続いており、その校舎は一、二年生の展示場と書いてある。
 御園生が留年していることを先輩やハルにはっきりと話したわけじゃない。ただ、話の流れから留年していることは察することができただろう。
 ふたりは、あえて突っ込んで訊いてくるでもなかった。
 御園生は俺とバッタリ会ってどう思っただろう……。もし自分だったら――。
 ……嫌かもしれない。自分が留年したことを知っている人間に会うのは。
 そう思うと少し怖くなってきて、どこへ続くのかわからない列に並ぶという案に賛成してしまった。