「かまっちゃん、緊張しすぎ……」
 イヒヒ、と笑われようともかまわない。っていうか、ハルの相手をする余裕なんてない。
「そんな緊張するほどかわいいの?」
 隼人先輩に訊かれてコクコクと頷いた。
「それは楽しみだ」
 楽しみにされても困るんだけど、と思いつつ学園前のバス停に降り立つ。
 厳重な身体チェックを受けたあと、緩やかな坂道を上がれば校門が見えてきた。校門の脇には実行委員らしき人たちがパンフレットやブレスレットを配布している。
 御園生は実行委員とかやるタイプじゃない。
 そうは思いつつも、ひとりも漏らさず顔を見て確認していく。
「かまっちゃんの真剣度合いがストーカー並みな件……」
 ハルにからかわれるものの、もうそんなことはどうでも良かった。もう一度、もう一度会えたら今度こそちゃんと話したい。普通に言葉を交わしたい。
 けれど、そう簡単に会えるはずもなかった。