インターハイで見事優勝を遂げた滝口先輩は夏で部を引退し、その後は廊下で会うと挨拶を交わす程度だった。
 そんなある日、先輩がクラスまでやってきた。
「かまっちゃーん」
 実にのんきな調子で呼び出された。
「どうしたんですか?」
「さて、なんでしょう?」
「いや、わかりませんってば……」
「女々しい鎌田くんにプレゼントをあげようと思って」
「は?」
 藪から棒に、とはこういうことを言うのだろうか。
「彼女のこと、まだふっ切れてないんじゃないの?」
 言われて黙る。
 諦める、なんて潔いこと言っておきながら、全然諦められてないしふっ切れてもいなかった。