「むしろ、ハルを好きになったほうが簡単だったかもしれない」
 そんなふうに返すと、
「先輩助けてっ」
 ハルは隼人先輩の影に隠れた。
「だー……ハル、うざい、離れろっ」
「だってっ! かまっちゃんがボーイズラブ発言するから!」
「「してないしてない、したのはハル」」
 俺と先輩の声が重なり、ハルがてへっと笑う。
「でも、要はその手の話です。ただ、俺の恋愛対象はきちんと女の子ですけど」
 たかだかこれだけのことなのに、口に出すのもちょっときつかった。
 だいたいにして、男同士で恋愛話っていつ以来だろう?
 考えてしまうくらいには久しぶりだった。
「かまっちゃんの好きな子かぁ……。考えてみたら、こういう話するの始めてじゃない?」
 先輩に言われ、照れ隠しに頭を掻く。
「なんていうか、こういう話を人にすること自体が久しぶりすぎて……」
「なるほど……。ね、どんな子? かわいい? 美人? その子のどんなところを好きになったの?」
 訊かれて、これは隼人先輩の優しさなんだろうなと思った。