三月半ばに退院したって噂を聞いたけど、すぐにその噂は塗り替えられた。「再度入院した」と――。
 その後、彼女の噂を耳にすることはなく、慌しく高校生活が始まった。

 梅雨のじめじめとした季節を迎えた頃、久しぶりに彼女の噂を耳にし唖然とした。
 どうやら、高校の入学式も出席できず、ずっと入院したままだったという。そして夏休みに入る頃、進級の見込みがなくなり高校を自主退学した、という情報に更新された――。
 何も知らなかった――違う、知ろうとしなかっただけ。
 彼女が入院したとき、お見舞いに行くことも手紙を書くこともできなかったのは自分で、退学したと知っても何ひとつアクションを取れなかったのも自分。
 そんな自分を悔いているからだろうか。卒業シーズンになると彼女を色濃く思い出す。そして、これは新学期が始まって忙しくなるまで続くんだろうな。