片恋シリーズ~鎌田公一編~

「鎌田くんが寝坊って想像できないな」
 笑いながら、手が伸びてくる。もちろん、御園生の白い手が――。
「人間冷却機」
 は?
「私の手、夏でも冷たいの」
 御園生は人懐っこそうに笑って、俺の両の頬を自分の手で触れ、熱を持った肌を冷ましてくれた。でも、その行為にもっと熱を持ってしまう結果になったのは言うまでもない。
「よ、予鈴っ! 御園生、急ごうっ」
「うん」
 俺はこんな具合に、彼女のひんやりとした手から、好きな子の手から逃れた。
 中三の夏、甘酸っぱい恋の思い出。

 彼女から見た俺ってどんなだったんだろう? 想像できないって――彼女はどんなふうに俺を想像してくれたんだろう。
 こんなこと、素で訊けるほど強靭な精神は持ち合わせてなかったな。