悔しくなって御園生が走る羽目になったいきさつを洗いざらいぶちまけた。元はといえば、あんな中途半端な「性教育」集会をするからこんなことになったんだ。
 普段はなんの問題もない生徒で通っている俺が感情のままに話したからだろうか。
 先生たちは驚き、誰がそんないたずらをしたのかを早急に割り出した。
 本当は、今までのいじめの件も全部言いたかったけど、それは御園生が嫌がりそうだったから……。だから、そこまでは話さなかった。
 でも……話すべきだったんだろうか。
 俺、なんであんなに何もできなかったんだろう――。

 彼女に纏わる記憶はそんなひどいものばかりでもない。
 ある日、彼女が昇降口で空を見上げて途方に暮れていた。
 朝は雲ひとつない快晴だったのに、午後には雨がしとしと降りだした。