だって彼女は――クラスで極力目立たないように、誰にも声すらかけられないように、そっと密やかに存在しているのだから。
 容姿で目を引くにしても、彼女の発言数は驚くほどに少なかった。声が聞けたらラッキーと思ってしまうほどに。そんな人間がかまってほしいなどと、自ら倒れるような行為に走ることはないと思う。
 ――この人たち、御園生の何を見てるんだよ。仮にもひとりは担任なわけで、生徒を観察するのが仕事だろうに……。
 このとき、少しわかった。御園生が保健室に行きたがらない理由も、家族に心配かけまいとする気持ちも。
 保健の先生は御園生の苦痛を理解していない。それは担任にも同じことが言えただろう。けれど、家族は心配してくれる。そのうえ親は学校に来て理解を求めようとしてくれるんだ。それも、一度や二度ではないのだろう。だから、彼女は身動きが取れなくなって――結果、人に知られないように、という道を選んだのだ。