片恋シリーズ~鎌田公一編~

 水野春は生徒手帳を取引材料には使ったものの、一応俺の意見は訊いてくれていた。けれど、滝口先輩にいたっては一度も尋ねられなかったな、と……。
 このあたりが、滝口先輩が水野春に「強引」と言われるゆえんなのかもしれない。
 そんな成り行きで入った部ではあるものの、弓道というのはなかなかいい選択だったのかもしれない(実際には「選ぶ」という意識は皆無だったけれど)。
 中学のときにやっていた、剣道に必要とされる瞬発力や俊敏さは必要ない。どちらかというならは速筋よりも遅筋を使うスポーツ。けれど、茶道部に入らなかった時点で俺は彼女との接点を確実に失った気もしていた。

 それがどうしたことか……。
 入学して一年ちょっと経った頃に偶然再会した。そして半年以上かけてようやく連絡が取れるようになり、玉砕したあともこうやって文通のようなメール交換を続けている。
「……人生何が起こるかなんてわからないものだな」
 今は御園生を間に挟んだ関係だけど、もし俺が藤宮の医学部に合格すれば、藤宮くんとだって友達になれるかもしれない。
 そしたら、彼を誘ってみようか。「隼人先輩の家の道場へ行ってみない?」と。
 そんな日を楽しみに、俺は今日も勉強に励む――。