片恋シリーズ~鎌田公一編~

 前かがみになったときに落としたのだろうか……。普通なら気づきそうなものを、なぜ気づかなかった自分……。
 思わずひとり突っ込みしたい気分に駆られつつ、親切な人に拾ってもらえて良かったと思った。
「ありがとう」
 受け取ろうとしたら手を引っ込められる。
「ブレザーの胸ポケットってさ、かがんだ拍子に落としやすいからやめたほうがいいよ?」
 言いながら、水野と名乗った男子は俺の生徒手帳で実演して見せる。正確には、地面に落ちる瞬間に生徒手帳をキャッチしたわけだけど……。
「……そうみたいだから、次からは胸ポケットはやめておく。入れるなら内ポケットにする」
 なんで俺は対応策まで話しているんだろう。
 疑問に思いつつも、それで返してもらえると思っていた。けれど――。
「あのさ、ものは相談なんだけど。コレ、返す代わりに一緒に弓道部に入らない?」
 ものは相談? 返す代わりに入部? この人、何言ってるんだろう。
「……水野くんだっけ?」
「そう、水野春。友達はたいていハルって呼ぶ」
「じゃぁ、ハルくん。それ、返してください」
「だから、弓道部に入ってくれたら返すってば」