片恋シリーズ~鎌田公一編~

 タキグチセンパイ……。
 誰それ。俺の知らない名前。……当たり前だけど。
「有名な人なのかな?」
 首を傾げると、
「知らないの?」
 背後から声をかけられてびっくりした。
「そんな……幽霊でも見たような顔しないでよ。俺、生身。人間、生きてる人。OK?」
 声をかけてきた男子は真新しい制服に身を包んでいる。……ということは自分と同じ新入生なわけで、同級生なわけで、しかし知らない人なわけで……。
 入学したばかり、というよりは入学式当日の午後、さほど社交的な活動をしたわけでもない俺に友達がいるはずもなく――。
「俺、同じクラスの水野春」
 ……同じクラスだったのか。
「俺は……」
「同じクラスの鎌田くんっしょ?」
 なんで知ってるんだ? 確かにクラスで自己紹介は済んでいたけれど、カ行とマ行じゃ離れすぎている。席が前後左右だから覚えられた、というわけでもないだろうし、何より人に印象づけられるような自己紹介をした覚えもない。