片恋シリーズ~鎌田公一編~

 教室で弁当を食べたあと、新入生は気になる部の見学へ向かう。俺は部室棟の裏にあるという茶道部を目指して歩いていた。
 たくさんの部が呼び込みをしている中、ひとつの人垣が目に留まった。人垣ができているにも関わらず、呼び込みの声が聞こえてくるわけではない。
 何部だろう……?
 足を止め人垣に近づくと、弓道部のデモンストレーションが行われていた。
 人の視線は弓をかまえた袴姿の人に注がれていた。
 びっくりした。きれいすぎて……。
 顔がきれいとかそういう意味じゃない。イケメンの類ではあるけれど、そういう意味の「きれい」じゃなくて――。
 袴姿の人が動くたびに息を呑んだ。矢を放ったときには呼吸を忘れた。
 放たれた矢はすべて的中。
 その人が動くたびに、シュス、と衣擦れの音が聞こえ、その音が妙に厳かに思えた。
 一連の動作が終わると、ようやくその場が沸く。
「さっすが滝口先輩! 俺、海新に受かってマジ良かった! 入部してくるわっ」
 すぐ近くにいた三人組のうち、ひとりがタタタと走り出した。ほかにもぞろぞろと人が動きだす。