小さい頃、その人とはずっと一緒にいた。

どんな事があっても離れないで、

ずっと一緒に遊んでた。



でも、名前は教えてくれなかった。


住んでる場所も、学校も。




それでも好きだった。

優しかった。


面白かった。


なにより、私を大事にしてくれた。





でもある日、その人は突然






居なくなった。




引っ越したらしい。




大きくなってからお母さんに教えてもらった、


あの人が名前も住所も教えてくれなかったのは、



あの子が、孤児院の子供だったから。


きっと、あの子なりの優しさだったんだろうな。



当時は、孤児院なんて理解できないだろうからって




わざわざ悲しいことは、言わないでおこうって。



名前を教えてくれなかったのは、



引き取られて、いつか居なくなるのが分かっていたから。



自分を探さないように。



そう。



あの子なりの優しさ。