深呼吸をしたから? それとも、いつもと変わらないツカサの対応に落ち着きを取り戻したのだろうか。
 涙はまだ止まらないものの、ほんの少しだけ思考力は回復したように思う。
 この涙はなんの涙……?
 ひとつひとつ、順を追って考えてみよう。
 頭が真っ白になったのは受験が終わっていると知ったから。
 衝撃を受けたのは、自分が何も知らなかったから。
 涙が出たのは――受験が終わっていたから……?
 ううん、少し違う気がする。
 受験が終わっていたことや合格していたことを知らなかったから涙が零れた。
 でも、今涙が止まらない理由はそれだけの理由ではない。
 たぶん、「言う必要あった?」と言われたから。
 ツカサの言うとおり、「言う必要」はなかったのかもしれない。
 でも、知っていたかった。
 言う必要がなくても教えてほしかった。
 でも、教えてもらってどうするつもりだったの……?
 教えてもらったところで私ができるのは「がんばってね」と言うことくらいだろう。
 ――違う、そうじゃない。
 教えてもらって何がどうというわけではなく、ただ知りたかっただけ。知っていたかっただけ。
 今日、優太先輩や風間先輩とツカサの話をして何度となく衝撃を受けた。そのどれも、自分が知らなかったから、だ。
 ツカサの出る競技を全部把握していなくても困る事態にはならないし、私が大学受験の日を知らなかったところでツカサが困るわけでもない。
 でも、前者はともかく後者は知っていたかった。そんな思いがある。