来年だってこの時期になれば紅葉祭準備で忙しくなるだろう。そしたら、やっぱり白野へ行くことはできない気がする。
 ならば、その次の年、再来年はどうなのか――。
 二年後、ツカサは支倉のキャンパスへ通っていて、私はどこの学生になっているだろう。どんな日々を送っているだろう。そのとき、一緒に過ごす時間はあるのかな。
 色々と不安はある。でも、そのときに見る景色が楽しみでもある。
 数日先の楽しみと数年先の楽しみと、未来に楽しみがあることがひどく幸せに思えて笑みが零れる。
「どうかした……?」
「ううん、どうもしない。ただ、お散歩、久しぶりだなと思って」
「あぁ、夏以来だな」
 海へ行ったときは色んな話をした。
 雑誌を見ながらどこへ行きたいとかどこへ行こうかとか。ツカサが動物を好きだと知ったのもこの日だった。
 ほかには秋斗さんの話もした。
 あの日みたいにゆっくり過ごせる時間があったなら、もっと色んなことを話せるのだろうか。それとも、やっぱり話す努力が必要なのかな。
 このあと十一月は大きな試験もイベントもない。つまり、紫苑祭のまとめが終われば生徒会で会うことはなくなる。そしたら、ツカサと会えるのは週三回のお昼休みのみ。
 土曜日は午前授業だけれど午後はハープとピアノの練習があるし、日曜日にはレッスンがある。
 会える時間があるとしたら日曜日の午後のみだけれど、私の予定がどうこう以前にツカサは受験生だ。
 受験だからといってツカサが机にかじりついて勉強するとは思えないけれど、普段どんなふうに勉強をしているのかだって私は知らない。