ちょっと待て……。これで泣かれるって何!? 今度こそ理解ができない。
 そう思っていると、突然謝られた。
「ごめん……」
「なんの謝罪?」
「八つ当たりした謝罪……。会えなくて寂しいって思っているのが自分だけなのかと思ったら、すごく悲しかったの……」
 ……なんだ。やっと理解ができた。翠が抱いていた感情は、「寂しい」だったのか。なら、最初からそう言えばいいものを――。
「言いたいことは以上?」
「……うん」
「じゃ、最後にひとつ――付き合う以上は結婚まで考えてるから。そのうえでもう一度返事」
「…………」
「返事」
「……はい」
「同意、肯定の意味の返事と受け取るけど?」
 翠はコクリと頷いた。
 視線は俺を捉えているというのに、どこかまだ不安そうな表情をしていた。だから、掴んだ腕を引き寄せ口付けた。
「現実。夢じゃないから」
 しっかりと視線が合ったところで、俺は翠を残して図書室を出た。