「今からペアの名前を言うから、一番うまかったと思うペアに手を挙げて。最初は――三年の俺ら、風間、唐沢ペアが一番だと思った人」
 手は半数以上挙がったように見える。
 集計した数はホワイトボードに書き出された。その数は「43」。
「四十三人か……。やっべ、すっげー緊張してきた」
「私も……。ダンスを踊る前よりも緊張してるかも」
 そんな私たちの心境はお構いなしに次のペアが名前を呼ばれる。
「次。藤宮、簾条ペアが一番うまいと思った人」
 ペアの名前が発せられたらその一拍あとには手が挙がる。
 けれども、一拍経っても二拍経っても手が挙がることはなかった。
 桃華さんたちには誰ひとりとして手を挙げなかったのだ。
 その事実に私と佐野くんは息を呑む。
 桃華さんと海斗くんがステップを踏み間違えるとは思えないけれど、何か決定的なミスをしてしまったのだろうか。
 信じられない思いで多数決の進行を見守っていると、
「じゃあ、次。佐野、御園生ペアが一番うまいと思った人」
 パラパラと手が挙がり始め、最終的には半数近い手が挙がった。
 次の瞬間には佐野くんと顔を見合わせ笑顔になる。
 まだ結果が出たわけではない。それでも、私と佐野くんはこの時点で満足していたと思う。
 集計が済みホワイトボードに数が書かれると思ったそのとき、
「そこのふたり、聞いて驚けっ! 三十八人で佐野、御園生ペアが堂々の二位だ!」
 私はその場で飛び上がり、佐野くんは大きくガッツポーズをとった。
 そんな私たちを見て笑い声や拍手が聞こえてくる。
「佐野くん佐野くんっ、がんばったことが報われるって、こういうことを言うのかなっ?」
「YESっ! そうでしょっ!」
 私たちは無邪気に喜びあっていたけれど、多数決はこれで終わったわけではない。
 あともう一組を選出しなくてはいけないのだ。
「一位と二位で全員の手が挙がっちゃったから、残り一枠を決めるための採決とるよ。――藤宮、簾条ペアを支持する人、手挙げて」
 集まる人ほとんどの手が挙がり、風間先輩は数えることをやめた。